糖質制限が寿命・老化に悪影響/フジテレビ とくダネ!
こんにちは!株式会社肉体改造研究所 代表の竹田大介です。
3月19日(月)、フジテレビの朝の情報番組「とくダネ!」で糖質制限について取り上げられていました。
少し前から流行っている「糖質制限」ですが、これを長期間続けると、寿命・老化に悪影響を及ぼすとの研究結果を、東北大学大学院准教授の都築毅先生が解説されていました。
長期間糖質制限を続けると、見た目や皮膚の老化の進行・学習記憶脳の低下・脳の酸化ストレスの増加などから老化を促進するとのことです。
ダイエットには、エネルギーを持つ三大栄養素(タンパク質・脂質・糖質)のうち主に生命維持や身体を動かすためのエネルギー源としての役割を担う脂質・糖質の摂取を制限する方法が用いられますが、近年では脂質より糖質を制限する方法に世間の注目は移り変わっています(山田,2013)。
日本人は元々米が主食なこともあり、糖質を過剰に摂取して太っている人も多いと思われます。そのような人はもちろん糖質の摂取量を適切に制限する必要がありますが、近年ブームとなっている糖質制限は食事から米・麺・パンといった主食を完全に抜いてしまう手法が流行していました。
このような食事を長年続けたら人体にどのような影響が出るのか?という疑問について、まだ何十年もこの方法を続けている人はそういないことから、人間より寿命の短い実験用マウスを用いて実験を行い、その結果を解説されていました。
- 日本人の従来の食事に近い栄養バランスの餌を与え続けたマウス
- 洋食に近いタンパク質・脂質の多い餌を与え続けたマウス
- 人間でいう主食(糖質)を抜いた餌を与え続けたマウス
の飼育を続けたところ、寿命・老化ともに悪影響が大きかったのは3>2>1の順であったとお話されていました。
通常の餌と糖質制限食で飼育したマウスの画像を比較したのが下記です。
ネズミでも見た目が老化しているのがはっきり分かりますね・・・。
糖質制限については私も以前、認定講師を務めている日本肥満予防健康協会に、糖質制限によるダイエットについて先行研究をレビューし考察を加えた小論文を提出したことがあります。
糖質制限は、短期間であれば減量・ダイエットに有効かつ健康に悪影響を及ぼさないことが研究により明らかになっています。
- 糖質制限食と対照食(標準タンパク質食・脂質制限食)を比較したイタリアのグループによるレビュー論文(Manco et.al.,2005)では、対照食に対し糖質制限食では体重、糖代謝、脂質代謝が改善されたと報告されている
- 2型糖尿病患者に対して行った糖質制限食についてのオックスフォード大学のレビュー論文(Dyson,2008)では、短期では糖質制限食は安全かつ有効であると結論付けられている
しかし、これを長期間続けると、身体に様々な悪影響を及ぼすことが予想されます。
Engler(2006)は食事を抜くダイエット法による人体への影響を検討しており、食事を抜くと身体は「断食モード」に切り替わり、糖質とタンパク質・脂質がいずれもエネルギーとして使われるが、その順番は糖質・タンパク質・脂肪の順であると述べています。この「飢餓状態」が続くと、肝臓・筋に蓄えられたグリコーゲン(糖)が枯渇し、タンパク質の組織である筋および肝臓が分解され、身体が残りのタンパク質を保持するためにエネルギー源として脂肪をケトン体に代謝し、ケトン体をエネルギーとして利用します(ケトーシス)。ケトーシスは身体に対し悪心・疲労・便秘・低血圧・高尿酸値(腎疾患)・口中の不快感・妊婦の胎児毒性または死産といった悪影響を及ぼす可能性があり、ケトーシスの状態になると身体が脂肪と徐脂肪組織両方を保護するためにエネルギー消費量が減少、また徐脂肪組織の減少により代謝が低下し、結果的に減量・ダイエットが抑制されると報告しています。
Englerの報告は糖質制限というよりも欠食によるダイエット法による人体への影響を検討していますが、断食モードでのエネルギー利用順では糖質が最初であることから、糖質を極端に制限若しくは糖質を抜くダイエット方法でもカロリー収支を大幅にマイナスにすれば同様のことが起こると推察されます。
糖質(炭水化物)を制限すると、必然的にタンパク質・脂質の摂取が多くなります。
同番組では、タンパク質の過剰摂取が心血管疾患発症率と相関関係があり、心臓発作や脳卒中などの発生に繋がるとも報告していました。
糖質制限食に関する9つの医学論文から、5年以上糖質制限を続けると、死亡率が高まる可能性もあるとのこと・・・。
また、高齢者は若い人より老化などの原因となる異常たんぱく質が細胞内に溜まりやすいため、それを抑える糖質をしっかり摂ることが必要で、高齢者は糖質制限をやめるべき!と放送していました。
ダイエットは、健康状態の改善や、見た目を美しくするといった目的を持って取り組まれる方がほとんどだと思いますが、間違ったダイエットで健康を損ない、見た目を老けさせてしまっては元も子もありません。
健康的に若々しくダイエットしたい!という方は、どうか間違った情報に振り回されず、その道の専門家に相談して取り組んでください!
よろしければ運動のプロ・栄養のプロが揃っている弊社がサポート致します!!
参考文献
Dyson PA : A review of low and reduced carbohydrate diets and weight loss in type2 diabetes. J Hum Nutr Diet 21 : 530-538,2008
Law Engler : The Importance of All Meals. NSCA’s Performance Training Journal Volume4.Number6 : 10-11,2006
Manco.M , Mingrone G : Effects of weight loss and calorie restriction on carbohydrate metabolism. Curr Opin Clin Nutr Metab Care 8 : 431-439,2005
山田悟 : 栄養バランスのエビデンス. Diabetes Frontier Volume24.Number1 : 31-39.2013
執筆者:竹田大介
熊本県合志市出身。
ゴールドジム公認パーソナルトレーナーとして、ゴールドジム東陽町スーパーセンター・イースト東京(江東区南砂)・渋谷東京の3店舗で活動中。
大学院でのトレーニング科学における学術研究で得られた科学的知見を活かし、お客様の個性や目的に合わせて目標達成を効率的に導くオーダーメイドなエクササイズプログラムを立案し、楽しくトレーニングできるようサポートさせて頂いております。
株式会社肉体改造研究所 代表取締役
日本大学大学院文学研究科教育学専攻体育学コース 博士前期課程 修了
NSCAジャパン 最優秀論文賞2018 森永最優秀事例報告賞 受賞
NSCAジャパン 最優秀指導者賞 パーソナルトレーナー・オブ・ザ・イヤー2021 受賞