「先見経済」誌で連載開始!初回4月号「いつまでも元気でいるための食事学」
こんにちは!株式会社肉体改造研究所 代表の竹田大介です。
経営者向け雑誌「先見経済」4月号より、高齢者がいつまでも元気で過ごすための身体作りの連載を担当させて頂いております!
初回は「いつまでも元気でいるための食事学」
発行元の清話会様にご了承頂き、弊社ブログに転載致します。
いつまでも元気でいるための食事学
高齢になるとどうしても食が細くなり、肉や魚といったおかずをとらなくなりがちですが、実は肉や魚といったタンパク質はご高齢の方には特に摂って頂きたい栄養素です。連載第1回目となる今回は、ご高齢の方がいつまでも元気でいるための食事のポイントをご紹介させて頂きたいと思います。
その前にまず、栄養の基礎として「三大栄養素」と言われる栄養素の役割をお伝えしなければなりません。
・タンパク質(Protein)
タンパク質は、身体の活性組織(筋肉、内臓)を作る基になる栄養素です。タンパク質は毎日代謝されるため、必要量を供給しないと組織の消耗や萎縮のために全身倦怠感や脱力感を招き、日常生活に支障を来すことになります。筋肉量は加齢とともに減少していきますが、タンパク質が不足すると筋肉量が減少するスピードを速めてしまいますので、ご高齢の方は特にしっかり摂るように心がけましょう。動物性タンパク質は肉や魚、卵、乳製品から、植物性タンパク質は大豆製品と小麦製品から摂取できます。
タンパク質1gあたり4kcalのエネルギーを持っています。
・脂質(Fat)
脂質は日常生活や生命維持のエネルギーとなる栄養素です。それ以外にも転倒時に内臓や骨を衝撃から守るクッション代わりになったり、保温・断熱に効果を発揮します。ビタミンの吸収やホルモン・細胞壁の材料にもなるので、身体にとって必要な栄養素です。脂質はタンパク質食品と一緒に摂れるので、しっかりとタンパク質食品を食べていれば大丈夫でしょう。
脂質1gあたり9kcalのエネルギーを持っています。
・糖質(Carbohydrate)
糖質は身体を動かすための主要なエネルギー源で、特に脳のエネルギーに用いられるのは糖質(ブドウ糖)になりますので、お仕事で頭を使う読者の皆様は不足しないよう摂取する必要があります。糖質とは炭水化物から食物繊維を除いた部分で、日本人の主食であるご飯や麺、パン、フルーツ、甘いおやつに含まれています。
糖質1gあたり4kcalのエネルギーを持っています。
日々の食事でこれらの栄養素を過不足なく摂取することが重要ですが、どの程度とれば良いかは人それぞれ違います。食事で摂ったエネルギーが1日に必要なエネルギー量を下回ると痩せてしまい、筋肉量の減少に拍車をかけてしまいますので、まずはご自身に必要なエネルギーがどれくらいなのかを知りましょう。
ご自身の体重を、下表のご自身の生活程度に当てはまる部分のエネルギー量とかけることで、1日に必要なエネルギー量の概算が算出できます。
生活程度 あまり身体を動かさない 25~30kcal 身体をよく動かす 30~35kcal 1日中身体を動かし、数時間重労働 35~40kcal
1日に必要なエネルギー量が分かったら、今度はどの栄養素からどのくらいのエネルギーを摂るかが重要です。
そこで、下記エネルギー産生栄養素バランスをご参照ください。
理想的なエネルギー産生栄養素バランス タンパク質 13~20% 脂質 20~30% 糖質 50~65%
我が国で65歳以上の高齢者女性2,108人を対象としてタンパク質摂取量と虚弱との関連を検討した横断研究では、たんぱく質摂取量が16.1%エネルギー以上の群で虚弱のリスクが有意に低かったと報告されていることから、ご高齢の方は1日に摂取するエネルギーのうち16.1%以上はタンパク質から摂取することが勧められます。
一例として、体重60kgで年齢が65歳、生活程度は軽い(あまり身体を動かさない)方がいたとします。この方の1日に必要なエネルギー量は体重60kg×25kcal=1,500kcalになります。ご高齢の方は1日に摂取するエネルギーのうち16.1%以上はタンパク質から摂取することが勧められることから、1,500kcal×16.1%=241.5kcalのタンパク質が必要だということになります。
タンパク質は1gあたり4kcalのエネルギーを持っていますので、241.5kcal÷4=60.3g 約60gのタンパク質が必要だということになります。
ここでご注意頂きたいのが、60gというのはタンパク質の量で、食べた食品の量ではないということです。お肉を60g食べてもタンパク質は60g摂れません。
では、どのくらいのタンパク質食品を摂ればタンパク質が60g摂れるのでしょうか?
そこで、日本の食卓に並ぶ主要なタンパク質食品の100g当たりのタンパク質含有量を見てみましょう。
動物性タンパク質食品
鶏ささみ・・・23.0g
鶏むね(皮なし)・・・22.3g
鶏むね(皮つき)・・・19.5g
鶏もも(皮なし)・・・18.8g
鶏もも(皮つき)・・・16.2g
鶏 手羽・・・17.5g
豚ヒレ・・・22.8g
豚もも・・・20.5g
豚ロース・・・19.3g
豚ばら・・・14.2g
豚肩ロース・・・17.1g
牛ヒレ・・・19.1g
牛もも・・・18.9g
牛かた・・・17.7g
牛肩ロース・・・13.8g
牛リブロース・・・12.7g
牛サーロイン・・・11.7g
牛ばら・・・11.0g
あじ・・・20.7g
いわし・・・19.2g
さけ・・・22.5g
さば・・・20.7g
たら・・・17.6g
まぐろ・・・24.3g
あさり・・・6.0g
たらこ・・・24.0g
いくら・・・32.6g
じゃこ・・・23.1g
鶏卵・・・12.3g(Mサイズ1個 約6.3g)
牛乳・・・3.3g(グラス1杯200ml 約6.6g)
植物性タンパク質食品
豆腐(木綿)・・・6.6g(1丁350gだと約23.1g)
豆腐(絹ごし)・・・4.9g(1丁350gだと約17.2g)
納豆・・・16.5g(1パック50gだと約8.3g)
高タンパク質な鶏ささみや豚・牛のヒレでも100gあたりタンパク質が約20gですから、60gのタンパク質を摂るには1日に300gは摂らなくてはいけません。
これを3度の食事に分けるとすると、1食当たり100g以上の肉や魚を食べる必要があります。
欠食や、おかずなしの食事をしている場合ではありませんね💦
この記事をお読みいただいた方は、ぜひいつまでも元気でいるために、タンパク質をしっかり摂る食事を心がけてください!
参考文献
1)樋口満.新版 コンディショニングのスポーツ栄養学.市村出版 2009;P64.
2)Kobayashi S, Asakura K, Suga H, et al. High protein intake is associated with low prevalence of frailty among old Japanese women: a multicenter cross-sectional study. Nutr J 2013; 12: 164.
3)厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要.
4)日本肥満予防健康協会.肥満予防健康管理士講座テキスト3.食事療法.2015;P21,22.
5)日本肥満予防健康協会.JOPHダイエットアドバイザー資格講座 講師研修用テキスト.2013;P43.
※記事では糖質1gあたり9kcalとなっておりますが、4kcalの間違いです。
食事だけでタンパク質を適量摂取することが難しい方(忙しくて食事が不規則、小食で食べきれない など)は、プロテインサプリメントなどの栄養補助食品を利用することも有効です。
栄養補助食品については下記ページをご覧ください。
《先見経済連載記事》
2018年4月号「いつまでも元気でいるための食事学」
2018年5月号「強い足腰を手に入れる下半身エクササイズ」
2018年6月号「加齢により衰える筋肉、残る筋肉」
2018年7月号「高齢者でも筋肉は増えるのか?」
2018年8月号「高齢者はどの程度の負荷で筋トレすべきか?」
2018年9月号「高齢者はどの程度の頻度で筋トレすべきか?」
2018年10月号「高齢者のための寝たきり予防エクササイズ」
2018年11月号「メタボリックシンドロームの恐怖」
2018年12月号「基礎代謝向上!痩せ体質を手に入れるための筋肉トレーニング」
2019年1月号「筋肉をつけるためにはどのくらいの「タンパク質」を摂ればいいか?」
2019年2月号「健康的で若々しいダイエットを成功させるための「脂質」の摂り方」
2019年3月号「ダイエットを成功させるための「糖質」の摂り方」
執筆者:竹田大介
熊本県合志市出身。
ゴールドジム公認パーソナルトレーナーとして、ゴールドジム東陽町スーパーセンター・イースト東京(江東区南砂)・渋谷東京の3店舗で活動中。
大学院でのトレーニング科学における学術研究で得られた科学的知見を活かし、お客様の個性や目的に合わせて目標達成を効率的に導くオーダーメイドなエクササイズプログラムを立案し、楽しくトレーニングできるようサポートさせて頂いております。
株式会社肉体改造研究所 代表取締役
日本大学大学院文学研究科教育学専攻体育学コース 博士前期課程 修了
NSCAジャパン 最優秀論文賞2018 森永最優秀事例報告賞 受賞
NSCAジャパン 最優秀指導者賞 パーソナルトレーナー・オブ・ザ・イヤー2021 受賞