加齢により衰える筋肉、残る筋肉/先見経済6月号


こんにちは!株式会社肉体改造研究所 代表の竹田大介です。
本日は、4月より連載させて頂いている経営者向けのビジネス誌「先見経済」6月号の記事「加齢により衰える筋肉、残る筋肉」を、発行元の清話会様にご了承頂き、弊社ブログに転載致します。

 

人間は加齢とともに筋肉量が減少し、筋力も衰えていきます。しかし、衰えやすい筋肉と衰えにくい筋肉があることが様々な研究で明らかになっています。どこの筋肉が衰えやすいのかが分かれば、鍛えるべき部位が明確になり、トレーニング計画が立てやすくなります。

そこで今回は、加齢により衰える筋肉はどこなのか?という疑問を、先行研究をもとに解説したいと思います。

筋肉量は人種により異なることが分かっていますので、まずは日本人高齢者を被験者とした論文を見ていきたいと思います。

日本人筋肉量の加齢による特徴

この論文では、高齢者の介護予防に向けた健康づくりを支援するために、部位別に日本人筋肉量の加齢現象を明らかにすることを目的に、18歳以上の日本人4,003人(男性1,702人、女性2,301人)を対象に研究が行われました。

マルチ周波数体組成計MC-190(タニタ社)を使用し、立位で上肢(腕)、下肢(脚)、体幹部および全身筋肉量の測定を行い、統計解析を行いました。

まず、男女の比較では、筋肉量はすべての部位で男性の方が女性よりも有意に多く、男女とも加齢に伴い有意に少なくなることを示しました。

筋肉量と年齢の関連について、すべての部位において女性よりも男性の方が年齢による減少の程度が大きく、男女とも筋肉量の減少は加齢につれて大きくなることを示しました。

部位別に見た場合、上肢筋肉量の減少の程度は比較的緩やかで、女性は60歳頃まで横ばいに推移していました。下肢筋肉量では男女ともに20歳代から大きく減少することを示しました。体幹部筋肉量では、男性で45歳頃まで、女性で50歳頃まで緩やかに増加した後、減少に転じることを示しました。全身筋肉量では、男性で40歳頃まで微量に増加した後減少し、女性では50歳頃まで横ばいで推移した後減少しました。

20歳時と80歳時の筋肉量を比較すると、最も減少率が大きい部位は下肢、次いで全身、上肢の順となっていました。

このことから、ご高齢の方がいつまでもアクティブに過ごすためには、歩行能力に直結し加齢による減少率が大きい下肢の筋肉を鍛えることが必要だと考えられます。

次に、高齢者の筋力トレーニングについて多数の学術論文をレビューした総説論文をみてみましょう。

高齢者の筋特性と筋力トレーニング

この論文は、歩行能力の制限につながる筋量の減少と老化の関係及びその改善策を考えるための基礎的研究を概説した上で、具体的な歩行能力向上法を概説した総説論文です。

老化と筋量の関係を理解するために知っておきたいこと

1) 何歳から筋力は低下するのか?
これまでの欧米の研究では一般的に筋力は30歳代から徐々に低下し始め、50代からその低下の割合が高くなっていき、30歳代から80歳代までで約30~50%低下することが示されており、日本人に関するデータでは60歳代男性で脚筋力の低下が45~50%にも達している。

2) 筋力の低下と筋量における変化との関係
加齢による筋量の減少は、速筋繊維(大きな力を短時間発揮できる筋繊維)の選択的萎縮と筋繊維数の減少の相乗効果によって主にもたらされると考えられる。
筋力は筋の横断面積と比例関係にあることから、筋量の低下は筋力の低下を導くため、筋力低下を引き起こす最大要因が筋量の低下であることは間違いないであろう。

3) 後期高齢者(75歳以上)の筋力発揮の特徴
80歳では70歳時に比べて低速度での筋力発揮において明らかに低値を示す一方、高速での筋力発揮において筋力低下度は小さい。一般的に日常生活ではより低速での筋力発揮をする機会が多いため、低速での筋力低下を抑制することは、高齢者の生活機能を維持・増進していくための重要な課題といえる。

4) 部位による筋力低下に相違がみられるか?
上肢と下肢では、下肢の方が約10~15%低下率が高い。

5) 加齢による筋力低下とライフスタイルとの関係
65歳以上の群では平均より多い筋量を維持していた被験者は全て農業従事者であり、全員が日常的な運動習慣をもっていなかった。65歳以下群では、平均より多い筋量を維持していた被験者における職業の傾向に特徴は認められなかったものの、過去及び現在において運動・スポーツを日常生活の中に取り入れている者がほとんどであった。

6) ウォーキングなどの持久的運動により筋力や筋量の低下抑制が可能か?
歩行やジョギングなどの持久的な運動では、加齢にともなう速筋繊維の萎縮に対する抑制には、あまり貢献しない。健康増進のための運動として、歩行やジョギングなどの有酸素的運動のみを推奨することは、筋委縮抑制の観点からみると問題になる。

7) 高齢者の筋力トレーニングの効果
高齢者においても若年者と同様に筋肥大による筋力アップが多くの研究者によって認められており、最も高齢者を用いた研究では、90歳を対象に約15%の筋横断面積の増大を報告している。

高齢者の筋力トレーニング実施の限界因子

1) 加齢による限界
ヒトは90歳を超えても特異的な筋力トレーニングを実施することで筋力や筋量を増大することができる。しかし、筋力トレーニングを実施したときの高齢者の筋量の増加は、若年者と比べると低値を示す。

2) トレーニング強度および頻度の限界
高齢者の筋力や筋量の増大を目的とした筋力トレーニングでは強度が高いほど効果が期待できることがこれまで多くの研究結果から推測されるが、トレーニング強度が高くなると血圧の上昇を招くという課題が生まれる。高齢者の筋力トレーニングの強度の限界因子は、運動中の血圧上昇によって決められるであろう。
高齢者の筋力トレーニングの頻度は少なくとも週2回、48時間以上の休憩をあけて行うことが望ましいが、筋繊維のダメージの増加や筋繊維の蛋白分解の回復時間から、週4回以上の高強度筋力トレーニングの実施はトレーニング頻度の限界であると考えられる。

高齢者における筋力トレーニングのトレーナビリティ(トレーニング効果が得られる可能性)の限界因子

1) 筋力の限界
高齢者であっても筋肥大のトレーナビリティを長期間有している。高齢者における筋力トレーニングのトレーナビリティの限界は、若年者と同一である可能性があり、トレーニングの強度、期間および頻度によると考えられる。

2) 筋繊維タイプ別における筋肥大の限界
高齢者における筋力の低下は、とくに速筋繊維の選択的な萎縮が大きな影響を及ぼしている。それゆえ、筋力トレーニングを実施して速筋繊維を肥大させることが必要となる。高齢者の筋力トレーニングの効果における限界因子には、筋力トレーニングにともなう筋繊維タイプの移行(遅筋繊維→速筋繊維への移行等)による貢献度は小さいと考えられる。

これらのことから、高齢者であっても高強度の筋力トレーニングを継続的に実施することで筋肉量増加と筋力向上は可能であり、遅筋繊維(発揮できる力は小さいが長時間力を出し続けることが出来る筋繊維)より速筋繊維を鍛えることが必要であることが分かります。

しかし、ご高齢の方が高強度の筋力トレーニングを安全に実施するには、高齢者指導経験豊富なトレーニング指導者の指導のもとでなければ危険もあります。

いつまでもアクティブに過ごすために、高齢者指導経験豊富なパーソナルトレーナーによるパーソナルトレーニングを週2回の頻度で行うことがおススメです!

東京近郊にお住いの方は弊社パーソナルトレーナーをご自宅に派遣することも可能ですので、ぜひ一度ご相談ください!

 

参考文献
1) 久野譜也、村上晴香、馬場紫乃、金俊東、上岡方士.高齢者の筋特性と筋力トレーニング.体力科学.52suppl:17-30.2003.
2) 谷本芳美、渡辺美鈴、河野令、広田千賀、高崎恭輔、河野公一.日本人筋肉量の加齢による特徴. 日本老年医学会雑誌.47:52-57.2010.

加齢により衰える筋肉、残る筋肉/先見経済2018年6月号

 

《先見経済連載記事》

2018年4月号「いつまでも元気でいるための食事学

2018年5月号「強い足腰を手に入れる下半身エクササイズ

2018年6月号「加齢により衰える筋肉、残る筋肉

2018年7月号「高齢者でも筋肉は増えるのか?

2018年8月号「高齢者はどの程度の負荷で筋トレすべきか?

2018年9月号「高齢者はどの程度の頻度で筋トレすべきか?

2018年10月号「高齢者のための寝たきり予防エクササイズ

2018年11月号「メタボリックシンドロームの恐怖

2018年12月号「基礎代謝向上!痩せ体質を手に入れるための筋肉トレーニング

2019年1月号「筋肉をつけるためにはどのくらいの「タンパク質」を摂ればいいか?

2019年2月号「健康的で若々しいダイエットを成功させるための「脂質」の摂り方

2019年3月号「ダイエットを成功させるための「糖質」の摂り方

 

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