高齢者でも筋肉は増えるのか?/先見経済7月号


こんにちは!株式会社肉体改造研究所 代表の竹田大介です。
本日は、4月より連載させて頂いている経営者向けのビジネス誌「先見経済」7月号の記事「高齢者でも筋肉は増えるのか?」を、発行元の清話会様にご了承頂き、弊社ブログに転載致します。

 人間は加齢とともに筋肉量が減少し、筋力も衰えていきます。特に下肢の筋力が低下すると歩行速度が低下し、階段昇降や立ち上がり動作に悪影響を及ぼし、移動能力が低下します。移動能力が低下すると動くことが億劫になり、動かなくなると筋力低下に拍車をかけるという悪循環に陥ってしまいます。

 では、加齢による筋肉量減少は「年だから」とあきらめるしかないのでしょうか?1994年以前は、高齢者が筋肉量を増やすことは不可能だとの見解が一般的でしたが、近年の研究により高齢者であっても適切な負荷を用いて筋力トレーニングを続ければ筋肉量の増加と筋力向上が可能であるということが分かってきています。

 筋肉量は人種により異なることが分かっていますので、今回は日本人高齢者を対象として3ヶ月間の筋力トレーニングを行い筋肉量に及ぼす影響を調査した学術論文2本の結果を見ていきたいと思います。

高齢者における自重負荷運動による下肢筋肉量の変化と転倒予防効果について

【研究の目的】

高齢者における下肢を中心とした最大筋力の3050%の自重負荷運動を3ヶ月継続し、下肢筋肉量への運動効果を調査し、転倒予防に関する効果を検証する。

【対象】

 宮城県T市在住の老人クラブに所属している、65歳以上の男性9名(平均年齢71.3±3.8)、女性12名(平均年齢75.3±5.1歳)計21名を対象とした。

【方法】

 健康教室に参加した21名に、3ヶ月間にわたり最大筋力の3050%の負荷量である自重負荷による下肢筋力訓練(椅子の座り立ち10回×3セット、膝伸展10回×3セット、上体起こし10回×3セット、膝上げ10回×3セット、踵上げ20回×3セット)を週12時間の健康教室と自宅で毎日実施した。

 体成分分析装置(InBody 720:バイオスペース社製)を使用し、多周波数により、右腕、左腕、体幹、右脚、左脚の抵抗値を基に体脂肪率、体脂肪量などの身体組成を計測した。

 ※この論文では他に健脚度測定と超音波測定も行っていますが、今回は筋肉量に関する項目のみご紹介致します。

【結果】

 最も増加したのは77歳男性で、筋肉量が51.6kgから53.7kgと増加した。最も減少したのは76歳男性で、筋肉量が42.1kgから40.3kgと減少した。平均でみると37.0±6.4kgから36.9±6.9kgと減少した。男女とも初回と比べ3ヶ月後に筋肉量は減少傾向にあった。

【私の考察】

 今回の測定方法は体内に微弱電流を流して抵抗値(電気の流れやすさ)を測定するバイオインピーダンス法を用いています。この測定方法は家庭用体組成計にも採用され、国内に広く普及し機器が用意しやすく、測定方法も簡易であるという利点がありますが、測定時の体水分量や体水分の分布の変動により測定結果が変動しやすいという欠点もあります。そのため、筋肉量の測定結果が減少傾向にあった理由としてこの論文の著者は「初回測定が暑い時期(8月上旬)で3ヶ月後の測定が寒い時期(11月初旬)であったため、気温差が大きく発汗による皮膚の湿潤や皮膚の血管が拡張し、体表面の血流量の変化が体水分の分布に変化をもたらし、測定誤差を計測したことが予測される」と述べています。

 確かに体水分量により測定誤差が生じやすい測定方法ではありますが、筋肉量がしっかり増えている被験者もいることを考えると、それ以外にも原因があるとも考えられます。

 こちらの研究では、「最大筋力の3050%の負荷量である自重負荷による下肢筋力訓練(椅子の座り立ち10回×3セット、膝伸展10回×3セット、上体起こし10回×3セット、膝上げ10回×3セット、踵上げ20回×3セット)」で3ヶ月間トレーニングを実施したとされています。「最大筋力の3050%の負荷量」だと最大努力(もう無理!と思うまで)で行えば30回以上は反復できることが予想されますが、10回や20回で終了していたとすれば最大努力までは反復していなかったと考えられます。そうなると筋肉量を増やせるだけの負荷には達していなかったことが推察されます。

 また、21名の対象者はそれぞれ筋力レベルが異なることが予想されますので、自重負荷で同じエクササイズを行っても人によっては楽に感じた方もいれば、きついと感じた方もいたでしょう。楽に感じた方にとってはトレーニング負荷が足りず加齢による筋肉量の減少を食い止めることができず、きついと感じた方にとっては筋肉量を増やすのに適切な負荷であったため筋肉量が増加したものと考えられます。

超高齢女性におけるパーソナルトレーニングが筋肉量に及ぼす影響についての一事例

 この論文は、93歳女性の3ヶ月間のパーソナルトレーニングの事例を報告した事例研究論文で、私が執筆したものです。

【パーソナルトレーニングの主な目的】

 歩行能力(階段昇降含む)の回復

【対象】

 千葉県A市在住の93歳の日本人女性1

【測定方法】

 バイオインピーダンス法を採用し、体組成計インナースキャン50 BC305(タニタ社製)を用いて体重・体組成を測定した。

【実施したトレーニングプログラムの内容と経過】

 週1回の頻度で13回、3ヶ月間のパーソナルトレーニングを実施した。

 下肢を中心に全身の大筋群を使用した多関節エクササイズを中心に、対象者の当日の体調等に配慮しながらできる限り最大努力まで動作を反復した。

 パーソナルトレーニング開始時はエクササイズテクニックの習得に重点を置き、徐々に強度を向上させ、1セットあたりの動作の反復回数はトレーニング初心者の筋肥大に適した反復回数である812回で最大努力に達することを目的に漸進し、セット数はトレーニング初心者に適した13セット内で実施した。

 強度の調整方法は、パーソナルトレーニング実施場所が対象者の自宅でありウェイトトレーニング器具等はなかったため、徒手抵抗などを用いて行った。

【プログラム実践の成果と考察】

 体重に変化はなかったが、筋肉量が1.8kg増加し体脂肪量に減少がみられ、体組成の改善がみられた。

 初回測定時 体重47.9kg、筋肉量33.5kg、体脂肪量12.5kg

3ヶ月後測定時  体重47.9kg 筋肉量35.3kg 体脂肪量10.5kg

 初回測定が13時頃、3ヶ月後測定が18時頃であったため、バイオインピーダンス法を用いた体組成測定における体脂肪率の日内変動が測定結果に影響を及ぼしている可能性は否定できないものの、本事例ではできる限り最大努力に近い運動強度で実施したこと、パーソナルトレーニングによりエクササイズテクニックの習得と運動プログラムの定着が短期間で行えたことで3ヶ月という短期間で筋肉量を増加させることができたものと考えられる。

 以上の先行研究から、ご高齢の方がトレーニングを行い筋肉量を増やすのは可能ではあるが、加齢による筋肉量低下を食い止めさらに筋肉量を増やすには、適切な運動強度で実施することが必要だと考えられます。

 ご高齢の方が筋肉量を増やすことができる高い運動強度でトレーニングを行うには、安全面に最大限配慮し、適切なエクササイズテクニックを指導できる、高齢者指導の専門家に指導を依頼することが最も安心で効果的でしょう。

 東京近郊の方であれば弊社からご自宅等へ高齢者指導経験豊富な有資格パーソナルトレーナーを派遣することも可能ですので、ぜひ一度ご相談ください!

参考文献

1.竹田大介.超高齢女性におけるパーソナルトレーニングが筋肉量に及ぼす影響についての一事例.Strength & Conditioning Jounal.25.6:14-20.2018

2.武山裕記,橋本実.高齢者における自重負荷運動による下肢筋肉量の変化と転倒予防効果について.仙台大学大学院スポーツ科学研究科修士論文集.11:95-102.2010.

《先見経済連載記事》

2018年4月号「いつまでも元気でいるための食事学

2018年5月号「強い足腰を手に入れる下半身エクササイズ

2018年6月号「加齢により衰える筋肉、残る筋肉

2018年7月号「高齢者でも筋肉は増えるのか?

2018年8月号「高齢者はどの程度の負荷で筋トレすべきか?

2018年9月号「高齢者はどの程度の頻度で筋トレすべきか?

2018年10月号「高齢者のための寝たきり予防エクササイズ

2018年11月号「メタボリックシンドロームの恐怖

2018年12月号「基礎代謝向上!痩せ体質を手に入れるための筋肉トレーニング

2019年1月号「筋肉をつけるためにはどのくらいの「タンパク質」を摂ればいいか?

2019年2月号「健康的で若々しいダイエットを成功させるための「脂質」の摂り方

2019年3月号「ダイエットを成功させるための「糖質」の摂り方

 

 

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